連結納税義務者の定義(第4条の2)からすれば、完全支配関係がある以上、親会社と分割後の子会社は連結納税の税務署長の承認(第4条の3)は得られるはずですが、棚卸資産が「譲渡損益調整資産」(第61条の13)ではないため、親会社と子会社間の棚卸資産の譲渡による損益については、連結法人間取引の損益の調整対象ではなく(第81条の10)、時価によらなければならないので、連結納税にするメリットはないように思われます。
いずれにせよ、東京本社に繰越欠損金があるときは、急いで連結にする必要はなさそうです。
この事例では、労働承継法によって、従業員は原則として新設会社に移籍になりますから、親会社の人件費は大幅に減少しますが、新設子会社は会社設立直後に大きな人件費を抱え込むことになります。
あらかじめ子会社に対する流動資金の手当てをしておかないと、会社分割後、子会社は一挙に経営危機に陥ってしまいます。
また、放置すれば、親会社の売上は激減します。
そうなると、親会社に融資している取引銀行は黙っていないでしよう。
親会社が売上を維持しようとすれば、従来同様、商品の仕入れを自分で行う必要があるでしょうが、従業員の手が足りないために不可能ということが起こりえます。
このため、労働承継法とは逆に、従業員は全員、親会社に残して新設子会社に出向とし、人件費は親会社が支払い、仕入れは親会社が行い、新設子会社は仕入れ価額の何パーセント以下で親会社から仕入れるとするなど、いろいろと工夫する必要があるでしょう。
課税当局に寄付金とみられないよう、親子間の商品価額の設定をしなければならないし、契約書も作成しておかなければならないでしょう。
ここで、特に注意していただきたいのは、新設承継会社の経済的基盤が脆弱で、分割会社の支援がなければ生きていけないと考えられる事例では、従業員は営業とともに新会社に移籍することを原則としている労働承継法は、かえって従業員に不利に働く場合があるという点です。
従業員が移籍せず、出向であっても、税制適格要件としての従業員引き継ぎ要件に欠けるところはありません(法人税基本通達1-4-10)。
実は、これと同様の目的をもった会社から、会社分割の依頼を受けたことがあります。
全体の流れがどうなるか、そのさいに作った計画書を参考までに示しておきましよう。
株主間契約とは、1つの会社の発行株式を保有している複数の株主間において相互に対面的に締結する民法上の契約である。
株主総会や取締役会で議決した事項は、株主間契約に違反していても法律上の効力が優先する。
議決権限定種類株式や株式消費貸借などの手法でも支配権を強化できる。
息子2人が会社に入ってくれたので安心して会社を任せることができる、と親は息子2人に株式をもたせましたが、息子たちが結婚し、孫ができるにつれて、不幸にも争いが始まってしまいました。
兄弟間の争いは、聖書に出てくるカインの大昔から職烈を極めるのは避けられません。
これでは早晩、会社の経営は崩壊します。
そこで、思い切って会社を2つに分け、一方を兄に、他方を弟に与えようと税理士に相談します。
株主間の争いを会社分割によって処理するのはどうでしょうか。
営業の内容、事業規模、顧客の動向などによって、方法や結論が違ってくるのは当然でしょうが、ここでは、それらの具体的な事情をいっさい捨象して、会社分割がどれだけ有効性を発揮できるのかを検討してみましょう。
会社支配権をめぐって株主間で血みどろの争いが繰り広げられる事例は、非上場の大会社には結構多いものです。
典型例は、親から受け継いだ企業を兄と弟で経営している場合でしょう。
株主間の争いは、兄弟間の争いばかりとはかぎりません。
経営方針をめぐる株主間の意見の相違まで広く考えれば、意見の違う大株主間で会社を分けてしまおうとするこの形は、会社分割の歴史のそもそもの原型ともいえます。
アメリカで出版されている会社分割の解説書には、最初にこの形を解説しているものもあります。
会社分割の核心部分は、2点あります。
1つは、新設承継会社、または吸収承継会社が分割にともなって発行する株式を分割会社に割り当てるのではなく、分割会社の株主に割り当てるところ、つまり、人的分割することにあります。
2つ目は、その割り当てを非按分にする点にあります。
たとえば、分割会社の株主が親と兄と弟の3人だけで、親の持ち株が45%、兄の持ち株が30%で、弟が25%であるとすれば、新設承継会社または吸収承継会社の新株は、親にゼロ、兄にゼロ、弟に100%割り当て、兄弟問の非按分部分の清算として、弟から兄に、弟が所有している分割会社の株式25%全部を譲渡することにより、従来の会社は親と兄だけが支配し、新設承継会社は弟だけが支配する会社とすることができます。
しかし、この非按分型会社分割は「税制非適格」であり、分割会社に対する課税は避けようがありません。
また、分割会社の株式持ち分を兄に譲渡した弟にとっては、有価証券の譲渡所得という問題があります。
このため、この分割の形を選択する場合には、税法上の注意が特に必要であり、分割会社が課税されても問題がない場合(たとえば、含み損がある場合)、あるいは課税されても断行しなければならない特殊な事情がある場合など、見極めが肝要です。
株主間の紛争を解決する方法として、会社分割が有効な方法であるのに、課税があるばかりに会社分割の方法をとれないという結論もまた承服できません。
なにか方法はないのでしょうか。
要するに、課税を避ける方法さえみつかればいいのですから、会社分割としては、「税制適格」になるように分割しておき、兄は甲会社だけを支配することができ、弟は乙会社だけを支配することができるようにすればいいわけです。
1つの方法は、株主問契約をする方法です。
株主問契約とは、1つの会社の発行株式を保有している複数の株主間において、相互に対面的に締結する民法上の契約です。
といっても、民法典のなかにも規定がありませんから、非典契約の一種です。
契約法の原理さえ充足しておけば、法律上の効力が認められます。
ただし、株式には譲渡自由の原則がありますから(商法204条)、譲渡の自由を不当に制約する契約は公序良俗(民法90条)違反として法律上の効力が否定されないようにする配慮が必要です。
日本ではあまり株主間契約をしませんが、外資が入った合弁事業ではよくみられますアメリカ人の場合、まず、株主間契約を要求してきます。
株式の過半数を制していなくても会社をコントロールしようというよこしまな要求を実現するのに都合がいいということでしょう。
しかし、欠点は、いかなる契約内容も直接には会社の機関(株主総会や取締役会など)の法律上の意思に代わることはできない点にあります。
つまり、株主総会や取締役会で議決した事項は、株主問契約に違反していても法律上の効力が優先するということです。
相手方株主の意思を拘束する内容に法的効力を認めることは十分できますし、いかなる株主も自己の株主権の行使を完全ないし部分的に放棄する自由は法律上奪われないと解せられますから、目的達成のためには株主間契約で十分だと考えられます。
日本でも、株式の取引制限がない非上場企業のなかに、企業防衛上ないし代表取締役の地位防衛の目的で、(株式を保有する)取締役間だけの株主間契約をする例が見受けられます。
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